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ちなつのこと|盛岡りんごとあなたをつなぐ物語
ちなつのこと|盛岡りんごとあなたをつなぐ物語
社会人になるタイミングで地元に戻って、ひさびさに盛岡で過ごす夏。
3年ぶりに開催された盛岡さんさ踊り。
初めてのボーナス!
職場にも、働くことにも、少しずつ慣れてきて、週末はアップルパイづくりとりんごの研究。
これがいわゆる“仕事とプライベートの両立”ってやつなのかな。
そんなことを思いながら、副島さんのりんご園に向かう。
いつになくテンション高めなのは、いよいよ「ちなつ」が収穫の時を迎えたから。
私は、この時のために、副島淳一さんの畑に通ってきたと言っても過言ではない。
……そう言いつつも、すっかり、りんごの沼にはまって、ちなつ以外のりんごたちにも興味津々ではあるのだけど。
もとはと言えば、りんごのことを調べ始めたのも、副島さんのりんご園にお邪魔することになったのも、親友・千夏の結婚祝いにアップルパイを贈るため。
同じ名前のりんごでアップルパイをつくるためなのだ。
今までお邪魔した時は、キャップをかぶっていた副島さんだけど、今日はつばの広い麦わら帽子をかぶって、真夏のいでたち。
それでも、顔や手の甲はすっかり日焼けしている。40年近くりんごの研究に携わり、今は生産者としてりんごを育てる副島さん。
ちなつは、副島さんが所属していた研究機関「国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構」(通称 農研機構)の盛岡にある「果樹研究所」で生まれたりんごだ。
副島さんはちなつの生みの親のひとりであり、今はこのりんご園で6本のちなつを育てている。
収穫期を迎えたちなつ
副島さんの後をついて、りんご園の中を歩く。
遠くからだとよく見えなかったけれど、みどり色のりんごがたくさんなっている。
2ヶ月前は、まだどの実も大きめのさくらんぼくらいのサイズだったけれど、もうどこから見てもりんごだ。
木々の間を抜けて、お目当てのちなつにたどり着く。
ほかの木になっているりんごはまだ緑色ばかりだったのに、ちなつはもうすっかり色づいている!
真っ赤ではないけれど、あたたかみのある穏やかな赤色。
「ちなつは、盛岡の研究所が30年近い時間をかけて、たくさんの研究者がかかわって世に送り出したりんごです。
真夏に美味しく食べられる貴重な品種なんですよ」と副島さん。
30年?! 新しい品種をつくるのにそんなに年月がかかるなんて。
でも、新品種として登録されるまでに、40年かかった品種も珍しくないというからさらに驚きだ。
ちなつは、8月のお盆前後の時期に収穫できて、なおかつ味も食感も良い国産のりんごを作りたい、という研究者たちの思いから生まれたのだという。
もともと日本で8月に収穫できる「極早生」のりんごは少なく、一方で、お盆のお供え物としての需要はあったことから、1970年代初頭から新しい品種の開発が始まった。
1972年、盛岡の研究所に植えられていた「あかね」に、欧米で夏りんごとして知られる「スタークアーリエスト(Stark Earliest)の花粉を授粉したのが、ちなつ誕生の始まり。
この時の授粉で、207粒の種子を取ることができ、この種をまいて苗木を育て、7年後の1979年に初めて実をつけた。
さらに10年後、1989年には「リンゴ盛岡49号」という名前(「系統名」と言う)が付いた。
そして、全国13道県に試験的に植えられて、それぞれの地域の生育状況の調査と検討が行われた。
その結果が出たのは9年後の1998年。
各地で栽培した結果、「新品種候補にふさわしい」と認められ、その年に「ちなつ」と命名。
2001年には種苗法に基づく登録番号第9402号として品種登録された。
「ちなつ」名づけ親は副島さん
1972〜98年の歩みの中で、91年から携わり、品種登録に至った98年当時の担当者だったのが副島さんだ。
「8月の夏の盛りのころに成熟することから連想して、千の夏、ちなつと名付けたんです」と、ちなつの実に手をやる副島さん。
実は、ちなつ誕生までの道のりは平たんではなかったという。
ちなつの食味の良さに惚れ込み、世に送り出したいと考えた副島さん。
しかし当時、研究所の中では「盛岡49号の評価は必ずしも高くなかったんです」。
その理由は、ひとつひとつの実が200g程度と小ぶりで、1本の木からたくさんの実が取れないためだった。
品種登録を諦めかけた副島さんの背中を押したのは、盛岡で「りんご栽培の名人」と言われた生産者・山口久治さんだった。
盛岡生まれのりんご「さんさ」の栽培について教えを乞うため、山口さんのもとに通っていた副島さんは、品種登録前のちなつについて評価を依頼。
山口さんは「このりんごはいいぞ」とちなつの味に太鼓判を押してくれたのだという。
信頼し尊敬する生産者のお墨付きは、研究者だった副島さんを勇気づけたことだろう。
目の前のちなつには、盛岡の研究所でりんごの育種(品種改良)に取り組んだ14人の研究者のさまざまな思いが受け継がれている。
盛岡生まれのちなつは、盛岡で生まれ育った千夏のお祝いに、なんてぴったりなんだろう。
私は、偶然足を運んだ産直のおかあさんのおかげで副島さんに出会えたことを感謝せずにはいられなかった。
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