摘果作業のこと|盛岡りんごとあなたをつなぐ物語


6月上旬、梅雨入り前の盛岡の天気は不安定。
雨の日を避けて、副島さんのりんご園へ向かう。

初めて訪問した3月下旬には、まだりんごの木の芽が固かった。
5月上旬に来た時は、色とりどりのりんごの花が満開だった。

そして今日の副島さんは、“摘果”という作業をしているそう。
りんごの美味しさを決める大事な作業だと聞いたら、見学させてもらわない理由はない。

 

「5頂芽に1果」、それが摘果の法則

りんご園に着くと、副島さんは脚立の上から出迎えてくれた。



脚立の上で作業をするなんてたいへんそうだけど、副島さんのりんごの木は“わい化栽培”という方法で、木があまり大きくならないように仕立てて、作業の負担を小さくして効率的に管理できるようになっている。

その上、枝と枝の間に入って作業をしたり、脚立を立てたりできるように、ロープで誘引して枝が伸びる方向も調整してある。
枝ぶりまで計算されているなんて、まるで盆栽みたいだけど、それは見た目の美しさのためではなく、りんごをきちんと管理し出荷するため。

「りんごの摘果は、『5頂芽に1果』と言われてるんです」と副島さん。

うーん、「ごちょうが」って何?
どういうこと?

「5月に、中心花を残して側花を摘み取る“摘花”をしたでしょう? その時に残して結実したもの5つのうち、1つだけを残して小さい実を摘み取るんです」



りんごの花は、中心花1と側花4の合計5つでひと塊。
この塊が、長さ25〜30cmの枝に5つ程度できる。


摘花で25個のうち、5個の中心花が残って、さらに摘果でそこから1個だけになる。
残れるのは25個のうち1つだけ!
けっこうな競争率だ。



それだけ実の数を絞ることで、木への負担を減らし、それぞれの実に栄養が行き届いて、充分成長した甘いりんごになるのだそう。

光合成をして果実を大きく成長させるには、たくさんの葉が必要で、例えば「ふじ」だと1個のりんごを成長させるには、60枚の葉が必要だと言われている。

さらに、摘果は、その年に美味しいりんごを作るだけではなく、翌年の果実に栄養を残すためにも欠かせない。

「りんごの種類にもよりますが、うちだと1本の木に100個くらいの実を残すんですよ」。

りんごの木からいったい何個の実を収穫しているかなんて、今までは考えたことなかった。
これからは産直やスーパーで並んでいるりんごを見る目が変わりそう。

りんごの品質と、1本の木から採れる個数や大きさ。
その絶妙なバランスを取りながら栽培するのが、りんご農家さんの腕であり、経験なんだろう。



 

3つの過程を経て、摘果完了!

摘果は、1回で完了するのではなく、粗摘果→仕上げ摘果→修正摘果という過程を経て、果実を絞り込んでいく。
仕上げ摘果までは、花が咲いてから1ヶ月以内に、実が小さい状態のころに済ませるのが理想とされている。


盛岡では、「『チャグチャグ馬コ』のころまでに摘果は終わらせるもの」だと言われているんだとか。
チャグチャグ馬コは、毎年6月の第2土曜日(以前は6月15日)に行われている風物詩。
地域の行事にからめて農作業のスケジュールを管理していたなんて、風情がある。

粗摘果では、5個の実のかたまりのうち1個だけを残し、小さな実を摘み取っていく。
仕上げ摘果では5頂芽に一果となるよう、実を間引きする。
花が咲いて1ヶ月のこの時期は、果実の細胞分裂が終わるタイミングで、以降は細胞が肥大していくだけ。
それまでに終えることがポイントらしい。

最後の修正摘果では、形が良くない果実や、傷・虫の這った跡・へこみ・くぼみがある果実を落とし、木全体のバランスを見ながら、果実と果実の距離が近すぎるところがないかを点検する。

摘果作業の必需品は剪定ばさみ。
副島さんは6本の摘果ばさみを持っている。



とっても手間ひまが掛かる摘果作業。
長年、研究者としてたくさんのりんご農家さんの姿を見てきた副島さんは「量も味も(両方とも優れている)はありえない」と言う。
岩手の農家さんたちは「品質第一」という考えを持っている人が多く、それは何度も摘果作業を重ねて、生育させるりんごを厳選しているからなんだ。

 

小ぶりな種類のりんごほど、早めの摘果作業が大切

約150本のりんごの木が並ぶ副島さんの畑で、作業するのは副島さん1人。
一度に何本も手がけることはできない。
優先的に摘果するのは、8月上旬に収穫が始まる極早生の「ちなつ」や、11月上旬から出回る晩生種の「はるか」。
もともとが小ぶりなりんごほど、早めに摘果をすることで果実に栄養を行き届かせることが大事。

ちなつの木はしっかりと実をつけ始めていた。
2ヶ月後にはもう収穫できる夏のりんご。
だからといって、冬に収穫するりんごと比べて、今の時点で大きいかと言うとそんなこともない。

ちなつの木を見ながら、私は試作したアップルパイのことを思い出す。
もちろん目指しているのは、パティシエのおねえさんが言っていた「バターの香りとりんごの酸味が絶妙」なアップルパイ。

アップルパイのレシピ動画をいくつもチェックして、あの時のアップルパイに見た目が似ているレシピで作ってみた。
副島さんが育てた去年のシナノゴールドをくし切りにして、バターを溶かした鍋にりんごを入れて……。

オーブンから出てきたアップルパイの見た目は、ちょっとこんがりしすぎた感じだったけど、許容範囲。
正直、初めての割には悪くなかったと思う。
お母さんも妹も褒めてくれた。
でも、あのお店のアップルパイと違ってなにかが足りないんだよね。

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