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りんごの花のこと|盛岡りんごとあなたをつなぐ物語
りんごの花のこと|盛岡りんごとあなたをつなぐ物語
私の住む盛岡では、梅とほぼ同時期に桜の花が見ごろを迎える。
それが当たり前のことだと思っていたけれど、実はそうじゃないってことは大学時代を過ごした東京で知った。
「盛岡の桜が満開を迎えた」というニュースが流れたちょうどその日、りんご農家の副島淳一さんからショートメッセージが送られてきた。
「こんにちは。りんごの開花日は今後の気温次第で変わりますが、標準的には桜の19日後前後となっているので、ふじの開花は5月初めになると思われます。」
「標準的に」とか「19日前後」という表現が、長年、研究の世界にいた人らしい。
メッセージは「満開はそれから数日後となり、花を見るには連休後半が良いと思います。」と続いていた。
剪定作業を見学しに行った時、「りんごの花を見たい!」とお願いしたことを憶えていてくれたんだ。
5月、りんごが開花した園地へ
3月下旬に副島さんのりんご園を訪れた時は、寒空の下、まだどのりんごの木も芽が固く閉じていた。
あれから1ヶ月半、今度はどんな景色が見られるんだろう? わくわくしながら、副島さんのりんご園のある盛岡市南部を目指す。
北上川と並行して走る国道396号ぞいには、りんご畑がたくさんあって、まだ若い緑の葉を付けたりんごの木全体に、小さく白い花が咲き乱れていて、まるでかすみ草の花束みたい。
副島さんのりんごの木もこんな風になっているんだろうか。
国道から逸れて丘を登り副島さんのりんご園に到着。
あれ? 真っ白な花が満開の木もあるけれど、ピンク色の花を付けた木もあるし、まだ咲いていない木もある。
ここに来るまでに見てきたような、“一面、白い花を付けたりんご畑”とはちょっと違う。
「私の園地では20種類以上のりんごを栽培しているので、品種によって花の色も違うし、開花時期も違うんですよ」と副島さん。
なるほど! だから一斉に同じ色の花が咲かないのか。
副島さんのりんご園には、「ふじ」や「ジョナゴールド」「紅玉」といった有名どころもあるけれど、「藤原ロマン」「奥州ロマン」という名前の付いた“ロマンシリーズ”と呼ばれる岩手発祥のりんごもある。
そのほかに、副島さんが研究者として、既存の品種同士を掛け合わせて開発し命名した「きたろう」「こうたろう」など、私が初めて耳にするりんごもたくさんある。
20種類以上のりんごを何本かずつ育てているそうだ。
「ちなつ」も開花! 白とピンクの花咲くりんご園
この前お邪魔した時に1回歩いただけだから、このりんご園のどこに何の木が植えてあるのか、全然憶えられなかった。
でもひとつだけ、2列目に並んでいるのが「ちなつ」だっていうことだけはインプットした。
だって、私が副島さんのところに来る目的は、親友の千夏と同じ名前のこのりんごのことを知るためなんだから。
私は親友のお祝いするため、思い出のアップルパイを作るために、りんごのことを調べているのだ。
副島さんと一緒にちなつの木に向かう。
3月下旬に来た時は、花も葉も何もついていなかったちなつに真っ白い花が咲いている。
真ん中に、満開を迎えて咲き誇っている白い花。
そしてその周りを囲むようにして、うっすらピンク色をした今にも咲きそうなつぼみが膨らんでいる。
どの枝を見ても、花は同じつくりみたい。
隣の列の木も見てみると、こっちの花はピンク色で、周りのつぼみの色はもっと濃くて鮮やか。
「最初に咲く真ん中の花を“中心花”、周りを“側花”と呼びます」と副島さん。
今は“摘花(てきばな)”と呼ばれる、花を摘み取る作業の真っ最中なんだとか。
「中心花を残して側花は摘み取る。一番最初に咲く中心花は早く受粉し大きな実を付けるので、それだけを残します」と説明しながらも、手に持ったピンセットで素早く側花を摘んでいく。
まだ開花もしていないかわいらしいつぼみを摘むのは少しかわいそうな気もするけど、これも中心花に栄養を集中させるため。
美味しいりんごを育てるため!
でも、中心花を残した摘花ができないこともある。
それは中心花が遅霜に当たってしまった年。
盛岡では数年に一度、開花前や開花後に強い霜が降り、その影響でりんごなどの農作物に被害が出ることがある。
花芽や花が凍ると、受粉せず実がならない。
そういう年は、中心花を諦めて側花の中でいちばん生命力が強そうなものを残すのだそう。
色んな技術が進歩しても、人間は自然にはかなわないんだな。
りんごが受粉するには……
花の違いを見ながらりんご園を歩いていると、あれ、ちなつやさっき見たのと花の付き方が違う木がある。
中心花も側花も区別なく一斉に咲いていて、木の形もひょろっとして細長い。
りんごの木のあいだに植えられているけど、これはりんごじゃないのかな。
尋ねると、「良いところに気が付きましたね」と副島さん。
この木は受粉樹と言って、実をならせるための木ではなく、受粉のために植えられた木。
りんごは“他家受粉”といって、別の品種の花粉で受粉して実を付ける。
この細長い形の木々は、たくさんの花をつけ大量の花粉が生成される品種のりんごなんだって。
この副島さんのりんご園には「エゾノコリンゴ」「ナガサキズミ」などのたくさんの受粉樹がある。
実をならせたいりんごの開花時期より少し早く花が咲く受粉樹を選んでいるのだそう。
受粉樹はどれも小さな実を付ける。
副島さんは、岩手生まれの「紅ロマン」という極早生の品種に合う受粉樹がなかったことから、新しい受粉樹を開発したこともあると言う。
たくさんの研究の成果や農家さんのさまざまな手作業があって初めてりんごは実をつけるんだ。
ちなつの花を自分の目で見たら、夏になったら本当にこの木に実がなるんだ、って実感が湧いてきた。
ちなつの収穫が始まるまでに、アップルパイをつくれるようにならなくちゃ。
ちなつの木をじっと見ている私に副島さんは「よかったら、りんごを食べていきますか」と誘ってくれた。
こんな時期にここにりんごがあるなんて。
確かにほぼ1年中、スーパーにはりんごが並んでいる気がするけれど、最近通っている産直ではもう見かけない。
だから、生産者や産直にりんごがあるのは、旬の時期だけなのかと思っていた。
副島さんのりんご園の一画にある建物の中には、りんごを貯蔵するための冷蔵庫があるのだという。
そこから取り出して副島さんが剥いてくれたのは、シナノゴールド。
8分の1くらいの大きさに丁寧に切ってくれたシナノゴールドを口に入れる。
サクッとした歯ごたえ、そして甘さも酸っぱさもあって、味が濃い。
毎年冬に食べているりんごとまったく区別がつかないほどみずみずしい。
正直「旬のりんごがいちばん美味しいんじゃないかな」って思ってたこと、副島さんに土下座してお詫びしたい。
「この時期にこんなに美味しいりんごがあるんですね」。
素直にそう言葉が出てきた。その勢いにまかせて、「このりんご買わせてもらえませんか」と厚かましくお願いしてみると、快く分けてもらえた。
ちょっともったいない気もするけど、このりんごでアップルパイづくりに挑戦してみよう。
こんな美味しいりんごで初めてのパイを焼くことができると思うと、ワクワクしてきた。
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